なにかを頑張るとき、あらかじめ目標に対してご褒美を設定していませんか?
やる気を引き出すためにご褒美は有効ですが、あげかたを間違えると逆効果になってしまいます。
なぜご褒美が必要なのか
なにか行動を始めるとき、みなさんはまず何から始めますか?
でも、いつまでも先延ばしにはしていられない。。
よし、これを終わらせたらご褒美に○○しよう!
このように、その行動が大変であればあるほど、あらかじめご褒美を準備して行動を開始する人が多いのではないでしょうか。
なぜ私たちは大変なことを前にするとご褒美を用意するのか。
それは私たちの本能と関係があります。
人間は社会的動物であるがゆえに周りと協調しなければ生きていけず、社会的グループの中でなるべく揉め事を避ける方向に進化してきました。
揉め事を避けるには変わらないことが最も効率が良く、そのため人間は基本的に変化を嫌う性質があります(この性質をホメオスタシスと呼びます)。
何か行動を始めるということは、現在の状態から変化することであり、この変化を起こすために必要だと感じるエネルギーが大きいため、やらなければならないとわかっていても中々始められないという状況に陥ってしまいます。
この状況を打破する、最初の変化を起こすきっかけを作るために、私たちは多くの場合ご褒美を用いるのです。
間違ったご褒美のあげかたと行動の関連付け
この最初のエネルギーを作り出してくれる非常に優れたご褒美ですが、ある注意点を理解しておかないと、せっかくの行動をダメにしてしまうどころか、ご褒美を設定することで逆に次からその行動を始めるために必要なエネルギーがさらに大きくなってしまうことがあります。
では、その間違ったご褒美のあげかたとは、どういうものでしょうか。
それは、そのご褒美がなければこの行動はしないと思ってしまうような「魅力的なご褒美を設定すること」です。
例えば、あなたは子供のころ両親から「30分勉強したらお菓子を食べていいよ」というようなご褒美をもらった経験がないでしょうか?
あなたにとってこのお菓子というご褒美が非常に魅力的だった場合、
脳は、この“勉強する”という行為は“お菓子をもらう”というご褒美を関連付けます。
そして、“勉強したからお菓子がもらえる”ではなく、“お菓子がもらえるから勉強する”と認識してしまいます。
するとどうでしょう。
次に勉強しなければならない状況に陥ったとしても、脳は“お菓子がもらえるから勉強する”と認識していため
お菓子がもらえないなら勉強する義務はないと勉強という行為に対してやる気を出しません。
こうなると、行動を開始するためのエネルギーが最初よりも必要になるため、脳はより魅力的なご褒美を求めるようになっていってしまいます。
補足ですが、これは怒ったり注意する場合も同様です。
何かを禁止する際、激しく怒ってその行為をやめさせると
頭の中では本来伝えたい“してはいけないことをしたから怒られた”という認識から“怒られるからその行為をしてはいけない”に認識が切り替わります。
そうすると、本来望ましくない「怒られないならやってもいいや」「ばれなければ大丈夫」という考えをするようになってしまいます。
大人になると、何かをしたら怒られるという姿があらかじめ想像できてしまうため、批判されそうな事柄ほど「バレなければいいか」と不正行為や汚職に手を染めてしまいやすいのかもしれませんね。
正しいご褒美の決め方とは

本心からその行動を実行し、これからも自主的にその行動を行っていきたい・行ってほしいと思うのであれば、その行動に対し自分に決定権があり自分が選んだという主体性を感じさせることが重要です。
そして、脳にその行動を自分で行ったと認識させるためには、
その行動を自分が選択し、自分の責任で行ったと感じることが必要となります。
先程も例として取り上げましたが、魅力的なご褒美や厳しい注意など外部からの圧力で一時的に何かの行動をさせることはできても、その行動に対する責任が自分にあるとは認識されません。
その場限りでなく、これからもその行動を継続したい・させたい場合は、自分がその行動をすると選んだと外部の圧力なしに決めさせることが大事なのです。
そのため、やる気を出すためのご褒美も設定しつつ、ご褒美と行動を関連付けない正しくご褒美をあげるためには、ご褒美が強調されないようにすることが必要不可欠です。
例えば、ご褒美を上げる場合はサプライズで行動が終わった後にあげたり、ご褒美をいくつか用意しておき(なるべくグレードを振った方がご褒美との認識はされにくいです)、何か達成したらルーレットやくじでもらえるご褒美を決めるなど、その行動はその行動として脳に認識させ、ご褒美はまた別の行為として別個で認識させることが効果的です。
なにか行動する場合、何事も始めの一歩が一番エネルギーがいります。
正しいご褒美の設定の仕方を意識して、行動の好循環を起こしていきましょう。